第5章 平穏な日々に嵐はやってくる~十四松
「ふっ・・・それはオレの口からはとてもじゃないが言えない・・・」
「で?」
「え? あ、ああ・・・この失態はオレの全身全霊をもって償いをさせてもらうつもりだ・・・!」
「具体的には?」
「へっ?い、いや、あのー、それは~ほら、アレだ・・・アレだよ・・・! アンダスタァ~ン?」
クソ顔のドヤ顔でしどろもどろなカラ松をジトーっとした目で睨むと、どんどん小さく縮こまっていってしまった。
なんだかその様子が面白くて、ぷふっと私が笑いを漏らすと、キョトンとした顔で見上げてくる。その様子がまた少しだけ可愛く見えてしまった。
「いいよ、大丈夫気にしてないよ。実はその一松のことなんだけど・・・かくかくしかじかでね」
私は事の次第をカラ松に話すと、コタツ布団をめくり、中を見るよう促す。
中では子猫のミケ子が体を丸くしてすやすやと気持ち良さそうに寝ている。
「なるほど・・・そんなことがあったのか。 一松がそんな寂しがりやボーイだったとはなぁ。 兄であるオレと、姉のような存在のナス子を取られたと思ってそんな行動を・・・フ、可愛いところがあるじゃないか」
「いや違うと思う。 でもまぁ、上からしたら、下の子はいくつになっても可愛いものだよねぇ」
「ああ・・・。そしてこのプリティリトルキャットがナス子の新しいファミリーになったということか。ならば自己紹介をしておかなければならないなぁ・・・!」
「いや、寝てるし、コタツの中だから」
「オレの名前は松野カラ松・・・! 松野家に生まれし次男・・・静寂と孤独を愛する知的でクールな紳士・・・だが!ハートに秘めた熱い炎はいつでも消えることなくオレという存在を燃やし続ける・・・不用意に俺に近づくと・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・あの、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・火傷するぜ・・・!」