第37章 危険な香りの温泉旅行 本日最終日
「また侵入されたんじゃなくて、今日は私から松に侵入したと……?!うっそ、ちょっとこの旅行の間にこんな自分からそんな事するようになるとかヤバいよね、ね?!女の子としてあるまじき行為じゃない?!」
「……女の子?どこにいるの?」
自分の気持ちを隠すように、一松はニヤついたままキョロキョロとした仕草をすると、ナス子の顔を覗き込んだ。
その悪戯なムカつく笑みに、ナス子はデコピンを食らわせてやる。
「~~~~っ、また!……痛いんだけど!」
今度は一松がデコを両手で押える。
今思えば一松がナス子の寝起きを見る時はいつもデコに衝撃を与えられているような気がした。
「一松が虐めてくるから悪い!!……あ、あれ?妙に静かだと思ったら他の皆は?」
「さぁ?……温泉でも行ってるんじゃないの?10時くらいにはチェックアウトだしね」
チェックアウトと言われナス子はスマホで慌てて時間を確認する、まだ午前7時。
よくこんな早い時間に自分も起きれたものだなと称賛するが、とにかく安心した。
旅館を出る前に自分も温泉に浸かっておきたいと思っていたからだ。
うーん、と伸びをして立ち上がり、一松もそれに続いて欠伸をしながら同じく伸びをする。
ナス子が先に行き襖を開けようとすると、隣の部屋から騒がしい兄弟達の声が聞こえた。