第36章 危険な香りの温泉旅行 今夜は最高?
暗闇の中、怪しくオレンジ色のランプが揺らめく。
スマホの画面を見ると中には蝋燭が映っていた。
どうやらこのアプリは蝋燭の明かりを見られるものらしい。
少しでも雰囲気を出したいナス子はそれをすぐ様ダウンロードし、早速起動している。
これなら燃えないし息を吹きかけて消す事もない、安心である。
「最初誰がする?一松?カラ松?それとも私?」
「…………別に、誰でも」
「ならば俺が話し手となりトップバッターを飾ろうじゃないか、ブラザーもシスターも怖がって眠れなくならないよう気を付けるんだな、フフーン」
正直、ここにいる全員がカラ松の怪談話に期待してはいなかった。
どうせまた何かイタイ事でも言い出したり、女神だのカラ松ガールなどが出てきたりと意味のわからないサイコパスな事を言うのだろうと呆れた視線を送っていた。
━━━━━━━━━━送っていたの、だが。
「実はさぁ、この前の夜の事なんだが━━━━━」
・
・
・
「━━━━━━━━━━っと、言う事があったんだ。」
「「「「……………………」」」」
一瞬の沈黙の後、一人の男性が大声で口を開く。
「想像してたのと全っ然違う!!イタくない!うわあぁあん、もうぼくヤだよーっ!!!しかも家の中に何かがいたシリーズやめてよぉ、カラ松兄さんがこんな話するなんて思ってもみなかったんだけどぉ」
皆が全く期待していなかったカラ松の怪談話は、ビックリする事に凄くマトモで、聞いてるコチラもゾワゾワするような実体験話を披露した。
それを聞いたトド松は取り乱し耳を押えると近くの十四松に抱き付き顔を埋めている。
「……フ、いかがだったかな?ん~?」
「そんな事が松野家であったなんて知らなかったんだけどっ、てか今度それ確かめに行ってもいい?ちょっとゾクっときた!」
自分の家で起きていたであろう実体験話をされた松達は若干タジタジだがナス子は目を輝かせた。
勿論、一松は動じない。
もしかしたらこの実体験話は、カラ松と同じように一松も体験していたのかもしれない。
「おっまえ反則だぞカラ松!もう俺あそこ覗けないじゃん!!考えちゃうんだけど?!あ゛ー、聞かなきゃよかった!聞きたくなかった!!」