第36章 危険な香りの温泉旅行 今夜は最高?
「「「「「はぁ~~~~~?!」」」」」
ナス子の満面の笑みと言葉に一同あんぐりと口を開けたが、怪談話が苦手ではないらしい一松だけは目を開けてナス子の横に座った。
「あ、起きたねいちまっちゃ~ん!いい子だねぇ、偉いねぇ!お姉ちゃんと遊んでくれるよねぇ~」
「へへへ、あざーっす。怪談なら俺も参加する」
やっと構って貰えた喜びにナス子は一松の頭をグシャグシャと撫でながら絶賛する。
この3日間の夜で一番楽しいかもしれないとナス子は思った。
やられる側である一松は自分の頭を撫でるナス子の嬉しそうな反応に満更ではなく、口元を緩め嬉しそうにしている。
「ほーら、皆も偉いいちまっちゃん見習って輪になって集合~っ」
「こんな歳で旅行に来て怪談話とか、僕らもう子供じゃないんだしよくない?それに今はまだ怪談シーズンでもないよナス子」
チョロ松が嫌そうに返答するがナス子はお構いなしにチョロ松に輝きの眼を向けている。
はよ、来い。いいからはよ!!と言う声が聞こえてくるかのようだ。
「はぁ~~~~、じゃあ少しだけだよ?」
「わーい!!さっすがチョロ松ぅ、やっさしー!理解力あるぅ!!ふ~♪」
言ったチョロ松は溜息をつくと一松との間にナス子を挟むようにして布団の上に腰掛ける。
「えええええ、兄さん達マジなの?!ぼく怖い話とか絶対にイヤなんだけどぉ?!トイレどころか今日寝れなくなっちゃうよ~っっ」
怖い話が苦手なトド松は心底嫌そうな顔で立ち上がると、襖に手をかけこの場からなんとか逃げ出そうとしている。
パンパンッ
「十四まぁ~つ」
「あい!━━━━━━━━━━ヨイッショー!!!」
「アッ━━━━━━━━━━!!!」
ナス子がわかっていたかのように両手をパンパンと叩くと、まるで忠犬にでもなったかのような十四松が、トド松の腰を後ろから掴み布団へと投げ飛ばす。
布団のお陰で怪我なく済んだトッティだったが、それをいい事にまた掛布団の中に潜ってしまった。