第35章 危険な香りの温泉旅行 松の本音
いつもナス子の事を馬鹿にしてばかりのおそ松だ。
目で呆れた表情を作り、仕方なさそうな口調で横にいるナス子を見ると、おそ松は包んでいた手をグっと引っ張り自分の方に引き寄せる。
「お前さぁ~、もっと自分に自信持った方がいいよぉ?そりゃ俺もいつもお前に色々言うけどさー、それでもお前が言うほど酷いとはホントは思ってないからね?わかってるとは思うけど」
「そうそう、いっつもナス子姉は自分に自信ないからって自分を陥れた事言うよねぇ~、そこが確かにちょこーっと残念な所ではあるけど、ぼくだってナス子姉の事そんな風に思ってないし、可愛いって思う時だってあるんだよ?」
続いてトド松だ。
普段の言われようと違いすぎて正直ポカンとナス子は口を開けたまま言葉の人物達の顔を見る。
「僕だって自分に自信あるかって聞かれたらそりゃないよね。だからナス子の気持ちもわからないでもないけど、いくら何でもお前は自分を卑下しすぎなんじゃないの?こんな残念って言ってるお前ともう随分長い付き合いしてる僕らの事だって考えて欲しいんだけど?」
「俺も、人の事言えた義理じゃないけど……俺よりちゃんとしてるんじゃない?まず働いてるし……こんな所でこんな事ホントは言いたくないけどね、ナス子は……い、良いヤツだと思う」
そしてチョロ松は呆れ顔、一松は顔を赤くし目を逸らした。
「姉さんは姉さんだよ!!僕はいつも言ってるよ?ボクねっボクねっ姉さん大好き!!!」
「ブラザー達の言う通りだぞナス子、もっと自分に自信を持つんだ、そう!!この俺のようにな!!!」
普段絶対に聞く事の出来ない六つ子の言葉が、あろう事かナス子を励ましてくれているという事に、ナス子は胸が熱くなる。
これはなんと答えればいいものかと、心の中に答えを求める。
なんと言われようとも自分に自信は持てないが……
言われてみれば、こんな自分とずっと一緒にいてくれる幼馴染達の存在に少し目頭がツンとする。
「あの…ン…皆、その、ありっー」