第35章 危険な香りの温泉旅行 松の本音
揃って早速外に出ると、やはり夜は冷える。
浴衣の上に何も羽織ってこなかった7人は自分の体を寒さで抱いていた。
湯気が立ち込める足湯に浸かると、体の緊張が解けるように肩が下がって行く気がして、それと同時にホっと7人は安心しきった声をだす。
暫くの余韻の後に、最初に口を開いたのはトド松だった。
「あったか~い、足湯って体全体あったまるよね♪ふぅ……」
「足裏やふくらはぎは第二の心臓とも言われてるしねぇ、冷え性改善にもいいらしいよ?」
「へー、そうなんだ。それならお前が一番入るべきなんじゃねぇの?」
誰もがよく知る知識を若干鼻高く喋るナス子だったが、手や足がすぐに冷えてしまう自分自身に対しその言葉がおそ松から返ってきた。
「姉さん手と足いっつも冷たいもんね」
「眠い時はあったかくなるよー?いいなぁ十四松はいつもあったかくてさ~」
「ボク体温高いからね!ホラっ」
「ほんとだ~、やっぱりあったかいね十四松の手は」
十四松がナス子の手をとりギュっと握ると、冷たくなった手に熱がこもる。
その仕草を見ていたもう一方ナス子の隣に座っているおそ松が己の手もと言うばかりにナス子の手を包みこむ。
「こっちもほら、冷めてるじゃねーの」
「おそ松もありがとう、何でこんなに皆の手はいつもあったかいのかなと思ってたけど、今思えば毎日お風呂にちゃんと浸かってるもんねぇ」
いつもナス子は仕事から帰るとシャワーだけで済ませてしまう事がほとんどである。
本来なら身体の為に数十分以上は浸かるべきなのだが、それすらも面倒臭がるのだ。
「お前も銭湯とか行けばいいんじゃないの?それか自分の家の風呂に浸かるとかさ」
足をパシャパシャしながらチョロ松が言うが、だいたいナス子の返答は皆わかっているようで、ナス子が返すよりも早く一松から突っ込みの言葉が入ってしまう。
「どうせナス子の事だからそれすら面倒臭いって思ってるんでしょ……」
「うぐっ」
「もっと自分の体を労わった方がいいんじゃないのか、ナス子」
カラ松がお母さんのように横列の中からナス子の顔を覗く。
わかってはいても中々それが出来ないのがズボラな女なのだ。