第35章 危険な香りの温泉旅行 松の本音
「だってー、いざじゃあ喋りましょう!ってなって急に喋れる?!いつもみたいに普通に適当に喋ればいいじゃないの、改まって何喋るかとか聞かれたらこっちも考えちゃうんだけど?!」
「旅行と言えば恋バナじゃない?」
「はぁ??」
トド松はテーブルに肘をつくと両頬に手を当て、まるで澄んだ瞳で女子のような事を言い始めた。
まさかの恋バナ発言に日頃恋愛要素皆無のナス子は言う事がない。
ましてやつい最近、貴方たちを意識しました!とかとてもじゃないけど言える訳がない。
「恋バナー?俺らがそんなん話しても楽しくなくねえ?トト子ちゃんの話とか?ああ、ダメだ・・・虚しくなってくるっ」
おそ松ナイス。
ここにいるメンバーで恋バナをしても全然楽しい会話にはならないだろうとナス子はおそ松に賛同する。
ナス子は空っぽながらの頭で考えた。
今ここでこの話を回避するのは何が一番最適かと……。
一人ウンウン唸っていると、チョロ松があっ!と声を漏らす。
皆がチョロ松の方を黙って向いた。
「そうそう、言おうと思ってたんだけどさこの旅館の外に足湯があるんだって、さっきすれ違った女将さんに聞いたんだよね」
なんというタイミング!!ナイスだチョロ松。
これで恋バナしなくてはいいと思うとホッと一息つく。
「足湯かぁ、いいね!明日帰るんだし今入りに行こうよ!!」
そう言ってナス子が立ち上がると他の皆もヤレヤレと立ち上がる。
今日は皆でゆっくり話したいとか言いながら結局何のお題も出すことは出来ず、提案された話題すら逃げて足湯に助けを求めた。
仕方ない……仕方ないんだ……
今更、話す事ないんだから━━━━━━━━━━……。