第34章 【番外編】危険な香りの温泉旅行 ラッキー兄松
「ちょ、ちょっと?カラ松、チョロ松、おそ松も……ど、どうしたの?!もしかして打ち所悪かった?!」
仰向け状態から起き上がろうとする体勢のまま固まってしまった三人に、ナス子は心配そうに手振り身振りをしつつ声をかける。
すると、おそ松が真顔ですっと自分の手にあった物をナス子に差し出し、ぽつりと一言。
「ごめん、ナス子」
「は?」
「これは本当に、マジで、わざとじゃないから…………これ……」
おそ松から差し出されたものは、帯だった。
「帯……?…………。……………。………………っっっ!!!」
受け取った帯を見て、ナス子の視線はそのまま自分の身体へと移っていく。
腰に巻いていた筈の帯はなく、それを失った浴衣は前が大きく肌蹴ていた。
要するに、下着姿に浴衣を羽織っただけのような状態になってしまっていたのである。
その状態で、屈み込むような姿勢で三人を見下ろしていたナス子。
自分の状態に気付くと、ババっと手で浴衣の前を合わせ、後ずさる。
「……………み、見た…………?」
見られたに決まっているが、つい質問してしまう。
「まぁ…………………………見たよね」
間が長い。そして真顔のおそ松。
未だフリーズしているカラ松とチョロ松の肩をガシっと掴むと、二人もハッと我に返っておそ松を見る。
おそ松は近年稀に見る真面目な表情だ。
そんな様子のおそ松を見た二人は、表情を固くして固唾を飲む。