第34章 【番外編】危険な香りの温泉旅行 ラッキー兄松
「え???あの、なに??」
声を揃えて言う次男と三男の言葉に、長男が地団駄を踏む。
「━━━━ヤダ!!」
「嫌だって言ったら俺とカラ松に一万円ずつ払うって言ってたよなお前」
「ねぇ、ちょっと、なんの話?!」
「諦めろおそ松。いいじゃないか、今日一日だけだ、我慢しろ」
「はぁ?!ヤダね!!!」
「「一万円」」
「ぐぬっ……!!あ━━━━そう!じゃあいいよ!!わかったよ…………やっぱ嫌━━━━━!!だってしょうがなくない?!童貞だもん!目の前にあったら触りたいんだもん!!俺悪くねぇし!!あ━━━もうヤダ!ヤダぁ!!」
床をゴロゴロと転がりながら子供のように駄々をこねるおそ松に、カラ松とチョロ松の冷たい視線が向けられる。
「ホンっトに底辺中の底辺中の底辺だなこのクソ長男は。こんなのが俺らの長男かと思うと真面目に殺したくなるよ。今は服装がカラ松だから余計にウザったい」
「まったく同感だなチョロ松……んん~?最後のはいらなくないか?」
「ああごめん、つい本音が出ちゃったよ」
「チョロまぁ~つ???」
黙ってカラ松とチョロ松に挟まれたまま三人の会話を聞いていたナス子だが、未だ床に転がり続ける長男の側に置かれた自分のスマホをすっと拾うと、カメラを起動させておそ松を撮影する。
カメラのシャッター音にピタリと動きを止めたおそ松が、床に寝そべったまま三人を見上げる。