第34章 【番外編】危険な香りの温泉旅行 ラッキー兄松
「ちょっとナス子、気づくの遅くない?僕はてっきり部屋に戻ってきた時にすぐに気づいてくれると思ってたんだけどね」
「まったくだ……何もしなければ、自分達から言わない限りずっと気づかなかったかもな」
なるほど、先ほどの訳のわからないポーズはこういうことだったのかと、ナス子は納得する。
「ところで、おいクソ長男、いつまでナス子の腰を抱き寄せたままでいるわけ?」
チョロ松がそう言うと、抱き寄せられたままだったナス子もハッとしておそ松から体を離す。
「それで一体何がしたかったわけ?アンタらはっ━━━━━……」
台詞を全て言い終える前に、今度はチョロ松の服を着たカラ松にぐいっと腕を引っ張られ、身体を引き寄せられると、おそ松の服を着たチョロ松にも腕を掴まれる。
「へ?」
ナス子がキョトンとカラ松とチョロ松を見上げると、二人は目の前に立つ、カラ松の服を着たおそ松に、ニヤリと悪い笑顔を向ける。
その表情を見たおそ松は、ぐっ、と悔しそうに表情を顰める。
「賭けは俺とチョロ松の勝ちだな、おそ松。フッ、勝利の女神に頼むまでもなかったぜぇ」
「残念だったね、おそ松兄さん。ということで……」
「え?え?」
三人の間に挟まれ、わけがわからないナス子はキョロキョロとしきりに視界を右往左往させる。
「「今日一日ナス子の半径1m以内に近づかないこと」」