第34章 【番外編】危険な香りの温泉旅行 ラッキー兄松
「ちょっとカラ松!!おそ松みたいなことしてないで返してって!!」
ナス子がそう言いながらカラ松を見上げると、サングラスの中の瞳が楽しげに細められる。
スマホを取り返そうとしていた為元々至近距離ではあるが、急に腕を背中に回され、思い切り身体を密着させられるナス子。
突然のことに驚いて一瞬動きが止まるが、すぐに我に返り身体を押し返して相手を睨みつける。
睨まれたカラ松は、そんなことは気にも留めない様子で腰に回した手はそのままに、じっとナス子を見つめたまま薄く笑みを浮かべている。
サングラスの奥の瞳と、その表情をじっと睨んでいたナス子だが、ふと目を見開くと、一言ポツリと呟いた。
「……違う」
小さな呟きが聞こえたのか、視線はナス子から離さぬままカラ松は首を少し横に倒す。
カラ松に抱き寄せられている体勢のまま、隣にいるおそ松とチョロ松を見ると、なんともいえない表情でこちらを見ていた。
視線をカラ松へと戻すと、ぐっと眉を寄せ、呆れたように深く溜め息をつくナス子。
「…………アンタ、カラ松じゃなくて、おそ松でしょ」
確信しきった声でナス子がそう言うと、目の前のカラ松がニッっと笑ってサングラスを外す。
「……当ったりぃ~!」
カラ松の服装……タンクトップに黒い革ジャン、ドクロのバックルにスキニージーンズを着たおそ松がそこにはいた。
「カラ松とチョロ松も、なにやってんの?一体……」
そう言われると、おそ松の赤いパーカーを着たチョロ松と、チョロ松の緑色のチェックのYシャツとキャメル色の長ズボンを着たカラ松が、同時に深い溜め息をつく。