第33章 危険な香りの温泉旅行 王道パターン発動
「あ、帰ってきた。ナス子、ちょっと話があるんだけど」
ナス子とカラ松が部屋に戻ると、突然チョロ松が怒った顔でナス子を呼び自分が座っている前を叩きコチラに来るようにと合図をする。
様子だけでも緊張の見えるチョロ松に、晴れていた心も少し曇りがかってくるように思える。
「な、何?チョロ松……」
言われた通りに中に入ると、他の六つ子は各々好きな場所に座ったり寝転がったりしているが、チョロ松以外の兄弟には別段緊張した空気も流れていなければ、殺伐とした雰囲気を感じることもなかった。
「座って」
「は、はい!」
ナス子は内心怯えながらもチョロ松の言う事を聞き、正座で座るチョロ松の前に正座する。
正面から堂々と顔を見ることが出来ず、おずおずと視線だけを上げて顔色を窺った。
「……━━━━━━あのさぁ、お前はなんっっっでこんな所に来てまでこんなな訳?」
「お……おう?」
オットセイのような返事を返してしまうナス子を見る他の松野家ブラザー達も、カラ松以外は呆れたような表情を浮かべている。
その5人の表情に、一体何があったのかと、言われた意味がわからず首を傾げる。
「ホンっトにナス子は女らしさの欠片がひとっっつもないし童貞の僕たちへの配慮ってものがいっっっさいなってないよね!」
「何言ってるんすか?!訳がわからない!」
思わずカラ松の方を見ると、Why?という感じに肩を竦められる。
チョロ松は一番隅に置かれたナス子の荷物をチョイチョイと指さして黙ったままだ。
ハッキリ言ってくれればいいものを、何を勿体ぶっているのか。