第33章 危険な香りの温泉旅行 王道パターン発動
「何もないのならいいんだ。せっかくこうやって皆で旅行に来ているんだ、誰かが喧嘩していたら勿体無いからな」
「ふふっ、そうだね、同感」
「……ん?だが待てよ……それだと俺達全員から離れて別室で寝いてた理由にはならないのでは━━━━……」
「なるなる!めっちゃなるよ!ほ、ほらっ!アンタ達全員同じ顔だし!見てるとこう~~トッティに見えてきちゃってって言うか、そんな感じで!何言ってんのカラ松!もう!」
また蒸し返されては堪らないと、ナス子が慌ててカラ松の言葉を遮る。
「俺達の見分けがつかないほど浅い関係でもないだろうに」
「深くもないけどね……!まぁいいじゃん!もうその事はさ!」
丁度マッサージチェアーが時間経過で停止し、椅子から降りると、荷物を持ちカラ松の腕を引っ張って部屋を後にする。
本当はもう少し使っていたかったが……仕方がない。
「フッ……シス……ナス子、大胆だな……俺の腕を引く力はまるでメスゴリラのようだったが、そんなに俺と一緒に部屋まで戻りたかったのなら仕方がない」
カラ松の台詞に組んでいた腕を離し、ゲシリと足の脛を蹴る。
と言っても、スリッパだったのでそれほどの衝撃は与えられないのだが、カラ松は大袈裟に痛がる様子を見せる。
「アウチ!!シスタァ~!脛を蹴るのは勘弁してくれ!すごく痛いんだぞ!そこを蹴られると!!」
「わかってるからやってるんですっ!誰がメスゴリラだ!!」
「い、言ってない!」
「言ったでしょハッキリと!!ったく……」
そんないつも通りのやり取りに、溜め息をつきつつも、つい口に笑みが零れる。
痛がるカラ松の前を歩き、部屋へと戻るゴリラ……いや、ナス子の表情は、晴れやかだった。