第33章 危険な香りの温泉旅行 王道パターン発動
ナス子は口を開けたまま停止していたが、カラ松の言葉を理解すると、ガクリと身体から全身の力が抜け、ドっと重くなった。
「……ああ……なるほど……そういうことか……あは、あははは……は~……ビックリした……」
昨晩の事を思い出したわけでも、覚えていたわけでもなく、先ほど自分が言った言葉を推測しての発言だったのかと把握すると、失っていた体温が戻ってくるようだった。
カラ松が言ったことも、間違いではない。
間違いではないが、ここでカラ松の言葉を肯定すると、トド松一人が悪者になってしまう。
それはどうしても避けたかった。
「んーと……カラ松が心配しているようなことはないよ、大丈夫。さっきの私の言葉で、なんか誤解させちゃったんだね、ゴメン」
「……本当か?」
六分の一は嘘で、六分の五は本当なので、ほぼ本当ということでいいのではないか。
ナス子の中では勝手にこう判断され、嘘をついているという罪悪感はほぼなかった。
「ホントだよ。ありがとう、カラ松は優しいね」
昨晩の事はこのまま隠し通せそうだと、心底ほっとしたナス子がカラ松に笑みを向ける。
その笑顔に、カラ松は一瞬瞠目するが、頭上に上げていたサングラスを掛けなおすと、ビシリとポーズを決めた。
「フッ……そうか……俺は優しいか!YES、シスター……わかっていたさ・・・そう、わかりきっていたことだ!」
「至近距離でクソポーズ決めるのやめてもらっていいですか」
ナス子がすっと細めた目をしてそう言うと、カラ松は指先でサングラスのブリッジを押さえ、そして何故かまた外す。
いや、掛けなおしたんじゃないのかよ、と思わず心の中で突っ込むが、カラ松の行動がおかしいことなど今に始まったことではないので華麗にスルーを決め込んだ。