第33章 危険な香りの温泉旅行 王道パターン発動
「正直に答えてくれ。昨晩……何かあったんだな?」
ザッと顔から血の気が引き、見下ろしてくるカラ松から視線が外せない。
ナス子の表情は、カラ松の問いを肯定しているようなもので、それを悟ったカラ松は目を閉じて、一つ溜め息を吐く。
「どうして隠すんだ……実を言うとな、昨晩の記憶はないと朝言ったが、全部が全部ないわけではないんだ」
カラ松が言葉を紡げば紡ぐほど、ナス子の顔は真っ白になっていく。
昨晩の事を、覚えている?カラ松は覚えていた?いや、それとも思い出したのか。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……
そんな思考が、ナス子の頭の中を支配していた。
「だから、ちゃんと答えて欲しい。昨晩、何があったんだ……」
もう駄目だ━━━━━━━━……
今の状態のカラ松を、誤魔化すことは出来ない。
そう思ったナス子は、ぎゅっと目を瞑ると、肘置きに置いた手を強く握り締める。
観念して口を開こうとした次の瞬間、
「━━━━━━━トド松と」
「━━━━━━━………………え?ト、トド松……?」
予想に反したカラ松の言葉に、ナス子はポカンと口を開けこちらを見下ろすカラ松と視線を合わせる。
「昨晩、トド松が酔ってナス子にキスをしたことはしっかり覚えている……さっき、トド松にムカついていたと言っただろう、もしかして、俺達が覚えていないだけで、トド松にもっと……その、もっとスゴイことをされたんじゃないのか?」
そう言って来るカラ松の様子は、とてもふざけているようには見えない。
むしろ怒っているような、心配しているような、なんとも形容し難い複雑な表情をしている。