第33章 危険な香りの温泉旅行 王道パターン発動
これがおそ松や十四松だったら、隣でうるさかったんだろうなぁと、なんとなくそんなことを考える。
カラ松は、兄弟の中では口数が多いほうではない。
その分、口を開くと痛いことも多いのだが。
目を閉じてそんなことを思っていると、ふと、昨晩のカラ松を思い出してしまい、カッと目を見開き後頭部を椅子にガンガンと打ち付ける。
隣に座るカラ松が、ナス子の突然の奇行にビクリと身体を震わせる。
「どっ、どうしたんだナス子っ!マッサージチェアーの故障か?!何をそんなに激しく振動しているんだっ!?」
「いやっ!何でもないっ!大丈夫だからっ!頭がすっごく凝ってるからちょっと強めにね!」
「そ、そうなのか……?」
「そう!そうなの!だから気にしないで……!」
せっかく風呂上りに整えた髪の毛をボサボサにして、有無を言わせない迫力でそう言ってくるナス子にそれ以上追及することも出来ず、カラ松は思わず伸ばした手を引っ込めて、自分もマッサージを再開する。
またも訪れる静寂の時間。
今度は変なことを思い出さないよう、ゲームのことを考えることに決めたナス子は、椅子の上で大人しく機械に身を任せている。
その静寂を破ったのは、今度はカラ松のほうからだった。
「……なぁ、ナス子……少し━━━……聞きたいことがあるんだが、構わないか?」
少し遠慮気味に話しかけてくるカラ松に、閉じていた目を開き、そちらを見る。
「なに?どうしたの改まって……」
ナス子が小首を傾げてそう言うと、カラ松は自分が座っているマッサージチェアーの電源を切り、口を開く。
「昨晩のことなんだが━━━━……」
カラ松のその言葉に、ナス子の空気がピタリと止まる。
それに気付いているのかいないのか、カラ松は言葉を続ける。