第33章 危険な香りの温泉旅行 王道パターン発動
「でしょでしょ~、動物園でも言ったかもだけどぉ、このぼ~~~っとしてる感じが姉さんに似てるよねぇ。姉さんも、お風呂入ってる時ってこんな感じなんじゃないの?」
調子に乗るとすぐ一言も二言もいらんことを言ってくるのはこの兄弟共通らしい。
「あのね……そんなわけないでしょ?言っておくけど、入浴中のナス子さんはもうスゴイからね?お色気ムンムンだから。見たら鼻血噴くから」
こちらも調子を合わせてそう言いトド松の方を見ると、すんっとした顔でナス子を見つめるトド松の顔があった。
なんの感情も読み取れないその表情に、ビシリとナス子の顔に血管が浮く。
「おいコラ、なんだその顔は!」
「……っは~~~~~、姉さん、まぁだ自分のことがわかってないみたいだね……どうすればいいのかなぁコレ……あのね?姉さん、相手がボクや兄さん達ならまだいいけど、他の人にそういうこと言わない方がいいからね?これ優しさだから。優しさで忠告してあげてるんだからね?」
「…………」
心底呆れたような、そして同情するような目でそう言われ、怒りに口元がヒクつく。
トド松の態度に、昨晩のことを気にしている自分がアホみたいに思えてきた。
肩にポンと手を置かれ、なだめる様に優しく叩かれると、その手をピシリと払いのける。