第33章 危険な香りの温泉旅行 王道パターン発動
「あはははは、恥ずかしいなぁやめてくれるぅ?ほぉんとーに」
「いでででででで」
「あははは、仲が良いなぁ。二人の邪魔しちゃ悪いし、俺は部屋に戻るよ。久しぶりに会えて嬉しかったよ、お幸せにな~」
そう言って手を振り、ついぞ名前が思い出せなかった同級生と別れると、ジトリとおそ松を睨みつける。
「ちょっと……アンタが手ぇ離してくれないから誤解させたでしょ」
「別にいいじゃん、二度と会うこともないだろうしさぁ、なんでそんな気にすんだよ・・・あっ、もしかして、昔アイツのこと好きだったとか?!そうなの?!」
「━━━━━そう……な訳ないでしょ……名前すら思い出せないのに……」
「お前それはさすがに可哀想すぎるよぉ……?」
先ほどの同級生に思わず少し同情したおそ松だったが、自分にはどうでもいいことなのですぐ気を取り直して、ナス子の手を引き歩き出す。
一度引いた手汗が、またじんわりと出てくるのを感じた。
ふと、前を向いたままのおそ松が歩みを止め、呟く。
「……誤解じゃなくてさ」
「え?」
「ホントに付き合っちゃう?」
そう言って振り向き、おそ松はお馴染みの鼻の下を指で擦りながら笑う仕草をする。
その見慣れた顔と動きに、何故か心臓がドキリと大きく高鳴った。
自分は今どんな表情をしているのか。
それを確かめる術はない。