第33章 危険な香りの温泉旅行 王道パターン発動
どちらにせよ誰が好きと言われても混乱するばかりだ。
よく知っていたはずの顔が、徐々に自分の知らない男の人へと変貌した。
こんな普段グータラで馬鹿で口も悪くて猿やカピバラに似ていて、可愛さの欠片すらも一つもない自分に、まさかの六つ子が欲情していたと思うと、なんとも不思議で落ち着かない。
おそ松、カラ松の顔をじっと見ると、昨夜の事を嫌でも思い出してしまい顔が自然と熱くなってしまう。
こんな場所に長居は無用と早くなる脈を押え覚束ない足で部屋を後にする。
おかしい……自分は一体どうなってしまったのだろう……
「あー゛……これからどうすればいいってのよ……私は……」
困ったナス子は六つ子が寝ている隙にと、念願だった部屋の露天へと逃げるように向かう。
昨日の行為により沢山汗をかいてしまい、一刻も早く洗い流したい。
ダルさからはまだ解放はされていないが、温泉まで行くのも面倒な為、部屋に付いている露天へと向かう事にした。
正確な時間は確認していないが、まだ日は昇っていない。
さすがにそんな時間に六つ子は起きてこないだろう、昨夜はあんなに飲んで、酔っぱらって、止めをさしかけたのだから。
ちゃんと完全に仕留められなかった事が心残りだ。
そんな事を思いながらぐちゃぐちゃになった気持ちを落ち着かせるべく、温かな露天に入ると、一気に緊張が解れていくような気がした。
念願の部屋風呂だが、二日酔いのせいか長くは入っていられず、少し浸かると浴衣を着込み部屋に戻る。
ほとんど雑魚寝になっている六つ子を見下ろし、移動しやすそうな布団を見繕うと、ズリズリと隣の部屋まで移動させ襖を閉める。
ホっと息を撫でおろし、再度二度寝を決め込む事にした。
寧ろこのまま永眠して全てをなかった事にしたい。
どうか来世はファンタジー世界に生まれ変わって、魔法職として活躍できますように。
手を合わせて空にそうお願いする。