第33章 危険な香りの温泉旅行 王道パターン発動
だが……
昨晩の六つ子は、ナス子の知らない六つ子だった。
家族や幼馴染……そのどの言葉も、当てはまらない。
知らない━━━━━『男の人』だった。
自分に好意を向けてくる男性に対して恐怖心があるナス子は、まだ鈍い痛みが治まらない頭で考える。
自分も酔っていたからなのか、気心が知れている相手だからなのか……それとも……
理由はハッキリとはしないが、一つだけ言えるのは、昨晩あんなことをされたにも関わらず、六つ子達に対して恐怖心はないということだった。
六人全員にあんな行為を受けながらも、抵抗しきれなかった自分は、実は淫らな女だったのか……と、そんなことを思いショックを受ける。
もういっそ記憶だけでなく、自分の存在自体を削除してもらいたい。
今はスヤスヤと眠りについている全員と、あんな事になってしまい動悸が速くなる。
二日酔いにはなっているものの、アルコールが抜けた為か、罪悪感なのか何なのかわからない、正体不明の感情に心がチクチクと痛む。
そして、何故かあの忌々しい記憶の中からではなく、ふいに違う場面の、昨日のおそ松の言葉を思い出だした。
『じゃあ、お前はこの中で誰が好きなんだよ?』
勿論二次元一択!と、今までならサラリと応えていただろう。
だが、今、同じ事を聞かれたら、自分は即答出来るだろうか。
好きと言われれば、好きなのは間違いない。
だが六人全員に感じ始めているこの感情が、果たして恋愛としてのそれなのか、ただの情なのか、そこがわからない。
六人全員に・・・という時点で、恋愛感情ということはありえないのではないだろうか、と思うが、そこを真っ向から否定してしまうと、昨晩の行為が途端に罪深いものに感じてしまい、無意識にその考えを消去する。