第33章 危険な香りの温泉旅行 王道パターン発動
しかし、必死に寝付こうとしても頭が冴えてしまい、眠れない。
大好きな布団に潜っていると言うのに、昨晩の六つ子の事ばかりが頭を過る。
自分に警戒心はないのかと問われると、正直この六人相手に怒る事や心底呆れる事は多々あるが、警戒心はなかった。
ちゃんと本気で嫌だと言えばやめてくれると思っていたのに、酔っ払い相手に普段のそれは通用しないという事が証明された。
昨日の事は抵抗しきれなかった自分にも非があるとちょこーっとだけ思うが、だからといって、はいそうですか、と許せることでもない。
普段色々と煩い六つ子だが、分け隔てなく接する事の出来るその存在には、日頃からとても感謝している。
脳内で考えを巡らせ、何度でも崖から突き落としたいくらいの気持ちはあったとしても、この六人を嫌いになどなれない。
それは確かだった。
……よし、全部お酒のせいにしよう。
酒は飲んでも呑まれるな、これ常識。
コイツらにも、無駄かもしれないがお酒はほどほどにするよう言い聞かせようと誓った。
何度も何度も寝付こうと寝がえりを打つも、全く眠くならず、諦めてスマホをいじることにしたナス子だが、そのスマホが見つからない。
起き上がりテーブルの上や下、布団の周辺等を捜索するが見つからず、そうなるとスマホがある場所は限られてくる。
少し迷ったが、ナス子は意を決すると、襖の引き手に手をかけたのであった。