第33章 危険な香りの温泉旅行 王道パターン発動
昨晩ナス子が一人で寝付いたあと、隣の別室で意識を取り戻した六つ子達が、ナス子が一人で寝ていることに気付くと、布団ごとズリズリと元の場所へと移動させていたのだ。
━━━と、そんなところだろう……と無理やり自分を納得させる。
あんなことがあって自分は離れて寝ていたというのに、何故コイツらはそんな意も介さず元の場所に戻しちゃってくれているのか。
昨晩の出来事は、もしかして、所謂乱交……的なアレになってしまうのだろうか?
まさか、ありえない、自分に限ってそんなこと。
思わず乾いた笑いが漏れる。
酒に酔い、自我を失い、終いには酔い潰れる。
そこから導き出される王道パターンは、『昨夜の事は何も記憶がございません』なのだが、ナス子は大変不本意な事に、昨晩の出来事を全て余すことなく記憶していた。
「━━━最悪だ……やっちまった……もうダメ死にそう……これがゲーム世界ならぶっ壊せるのに!!」
「ぅ…………ん」
聞こえる小さな呻き声にハッとなりナス子は横を見る。
なんと同じ布団の中には、おそ松だけでなく、カラ松もいたようで、ナス子はその二人に挟まれるようにして眠っていたようだ。
シングルの広さしかないスペースに男二人、けして細いとは言えない女が一人、計三人。
狭すぎてろくに身動きも取れない。
ちらりと視線だけを動かし二人の寝顔を見ていると、思わず殺意が湧き上がるが、ここで起こすと面倒事が起きそうな為、なんとか自分を抑えた。
いつもは決して異性扱いなどしない六つ子達が、旅行先という非日常的生活によりあそこまで自分に対して態度が変わってしまうとは考えも及ばない事だった。
ナス子自身も、六つ子の事は異性として意識したことはなかったし、家族のような幼馴染だと思っている。