第33章 危険な香りの温泉旅行 王道パターン発動
まだ薄暗い早朝、珍しい奇跡のような驚く時間、スマホのアラームが鳴る前にナス子は目を覚ました。
いつもなら絶対に目覚めることのない時間。
目が覚めた原因は、激しい頭痛。
身体はダルく、鉛にでもなったかのように重い。
完全に二日酔いの症状である。
激しい頭痛の中、昨晩身の上に起こったことを思い出し、羞恥心、後悔、罪悪感などが渦巻き両手で顔を覆う。
そう、ナス子は昨日六つ子達にセクハラを受けた。
いや、もうセクハラというレベルを遥かに超えていただろう。
━━━━━アイツら……もっと痛めつけてやればよかった。
「酒の力って怖いわぁ~おっそろしいわぁ~、嫌いだわ~、もう絶対に飲まない。騙されない。特にあの闇松の出す飲み物は今後一切飲まない……」
松達はまだ寝ているハズだ。
何故『ハズ』かと言うと、昨晩の事がありナス子は隣の部屋に布団を引っ張っていき六つ子と襖を隔てた場所で寝た。
ナス子の名誉の為に断っておくが、セクハラを越えた事はされたが、一線は越えていない。
ガンガンと頭を内側から叩かれているような痛みに顔をしかめ、ふと自分の体に重みを感じ視線を落とすと、誰かの手の平が胸を包み込むように浴衣の中に侵入していた。
━━━━━━━━え、待って何でコイツがここに?!
ナス子はそこにいるはずのない人物━━━━━、おそ松の手を、起こさないようにしつつ払いのける。
また寝ている間に松に侵入された……!
そして胸を触られていた、と思ったところで、またも昨晩の事を思い出して、深く落胆する。
いくら酒を飲まされ酔っていたとはいえ……。
抵抗はしたものの、雰囲気や流れに逆らいきれなかった自分がいたことも確かだ。
もちろん一番悪いのは六つ子である。
そこは揺るがないし、ナス子もそう思っている。
重ダルい頭を起こし、視線を逸らすと、何故か布団が多い。
自分は一人で寝ていたはずなのに、何故周りに松達が一緒になって寝ているのか、理解が追い付かなかった。