第31章 危険な香りの温泉旅行 危険すぎる温泉旅行
言いながら、投げ飛ばされて壁からこぼれ落ちた後、何か言いながら頭を押さえ床をゴロゴロ転がっているトド松を見ると、目を据わらせて唾を吐く。
「投げ飛ばされるだけで済んでよかったじゃないのトッティ……」
手の甲で口を拭いながらそう呟くと、一松がコップに入った水を差し出してくれる。
「はい、これで口直ししたらいいんじゃないかな……」
「ありがとう一松……ったく、トド松だけに言えたことじゃないけど、お酒って怖いわ~……嫌いだわ~酔っ払いって」
一松から渡されたコップはキンキンに冷えていて、少し熱を持ってしまった身体には嬉しい冷たさだった。
ナス子は水を一気に煽ると、プハーっと大きく息を吐いた。
目の前で何故か両手を差し出していた一松に、コップを返却する。
「冷たくて美味しい~~っ!一松気が利くねっ」
「どういたしまして。美味しいでしょ?それね、この地域で有名な清酒なんだって……キンキンに冷やして飲むのが最高に美味しいって、さっき料理を用意してくれてた人が言ってたんだよね」
「へぇ、そうなんだ。甘いのにスッキリしてて、ほのかにお花の香りもするような……有名な清酒なんだぁ…………。……。……清酒?」
「そう、清酒」
一松がへへっと笑うと、少しの間の後、ぼんっという音とともに、ナス子が顔から身体から真っ赤になる。
「水じゃ?!水じゃないの?!清酒ってお酒でしょー?!なんでそんなものを差し出すの?!馬鹿なの?!馬鹿なのか!!私も馬鹿だ!!なんっで学習しないかなぁ~~?!一口目でお酒って気付かないかなぁ~~~?!!馬鹿だなぁ~~~!!」
「へへへ……人から出されたものには疑ってかからないと、ねぇ?はははは」
「あはははははは」