第31章 危険な香りの温泉旅行 危険すぎる温泉旅行
「あー……」
「それに、チョロ松兄さんの時に言ってたでしょ?あれは姉弟としてのじゃれあいだって、ぼくはナス子姉さんにとって弟じゃなかったの……ねぇ?」
澄んだ目をキラッキラさせてトド松は後ろに下がって行くナス子を壁へと追い詰めるように近づきそんなトド松の顔にナス子もたじたじになる。
「ち、ちが、それは、なんていうか……」
下がりに下がり踵が遂に壁にあたってしまい、逃げ場がない事に心中焦りだしてしまう。
ナス子が思わず肩を竦めて怯えると、トド松は急に下を向き悲しそうな顔をする。
「ごめん姉さん、ぼく、弟として困る事言ってるよね……他の兄さんがクズで馬鹿でどうしようもなくて、酷い事ばかりで姉さんも苦労しただろうし……ぼくまで姉さんを困らせたい訳じゃないんだよ?」
「と……トド松??」
急に悲しそうな表情と発言をするトド松に、少し心配になったナス子はその顔を覗き込む。
5人の兄弟とキスしておいて、姉弟としてのじゃれ合いだの、幼馴染だのという話どころではないのだが、トド松を除け者にしている訳では断じてないとは思うものの、急にしおらしくなれば気になってしまう。
「ごっ……ごめんねトド松、でも、ホントにしたくてしたってわけじゃ━━━……ン?!」
俯いているトド松がニヤリと笑い、両手でナス子の進路完全に塞ぐと、ナス子に顔を近づけ、他の兄弟に見せつけるかのように急に目の前にある唇に自分の唇を押し付けた。
「なーんてね、そんな事言うと思った?」