第30章 【微エロ*番外編】危険な香りの温泉旅行 売店にて弟松と
「ほらほら、早く行ってきなよナス子姉さん。新手の万引きだと思われちゃうよ?」
「私は新手のイジメにでもあっている気分なんだけどね!?」
絶対に買いたくない。
買いたくはないが、故意ではないにしろ店の売り物を傷つけてしまったことは事実であり、責任感とか社会の常識という言葉がナス子の心をチクチクと突つく。
そろりと雑誌の表紙を見ると、グシャグシャになったエロくて綺麗なお姉さんと目が合う。
「・・・・・・・・・っ無理・・・!!」
うぐぅ、とキツく目を閉じ、誰に渡そうとするでもなく雑誌を持つ手を前に伸ばす。
「私には・・・無理ですっ、買えません・・・いや、お金はある!お金の問題じゃなくてっ・・・」
「エロ本買うのって恥ずかしいもんね!!」
「そう!!そうなのよ十四松!!よく言ってくれた!!っていうか!なんで私が買ってこないと行けないわけ?!元はといえば、原因はアンタたちにあるんだからアンタたちが買ってきなさいよ!お金は私が払うから!!」
言いながら浴衣の袖に入れていた小銭入れを、雑誌と共に三人の前に突きつける。
「マジで?!姉さんエロっ腹、じゃないや、太っ腹!!じゃーボクが買ってきマッスルマッスルぅ!!」
十四松がシュバっとナス子の手から光の速さで雑誌を奪うと、あっという間にフロントの方へと消えていった。
すでに見えなくなった背中を、唖然と見送るナス子。
「え・・・?普通ああいう雑誌って、もっと買うの躊躇ったりしない?恥ずかしいって言ってたよね、十四松・・・」
「まぁそこはホラ・・・十四松だから・・・ね」
「それにしても、ナス子姉さんがああいうエロ雑誌に興味があったとはねぇ~、あ、もしかして、特集を見て買おうと思ったの?」
「トド松さん?私は買おうともしていなければ特集とか見てもいないんだけど???まるで私が進んで買ったみたいな言い方やめてもらえる??いやホント」
もはや何を言っても無駄だなと半ば諦めかけてはいるが、否定するところはしっかりと否定しておく。
さもなければどんどん六つ子のペースに飲み込まれてしまうからだ。
・・・すでにすっかり三人のペースにハメられてしまった感があるが、認めたら負け。認めたら負けなのだ。