第4章 平穏な日々に嵐はやってくる~一松~
「はい・・・追求しないでおきます・・・」
私は再度カラ松へと手を合わせた。カラ松よ、成仏しておくれ…
「ていうか何でクソ松にだけ『特別』に鍵を預けて俺らには渡しちゃダメなわけ?あのクソ長男はおいといて、俺そんなに悪い事した覚えもないんだけど」
心なしか『特別』という言葉だけ大きく強調されている気がする。
幻聴じゃなければ。
うーん、一松はまぁ六つ子の中でも大人しいしお互い無言空間も多いが、それが心地よいと感じる時もしばしばある。
お互い動物好きだし、二人で動物動画見たり映画とかTV番組みたりとかまったりする事も多い。
一緒にいて一番楽な相手かもしれない。
私の話も黙っていつも聞いてくれるし。部屋片づけろとか汚いとか言わないし。
化粧しろとかも強制しないし。
スイッチ入るとドSな一松が爆誕して虐められたりするけどさ・・・。
「いやぁ、カラ松は家事やってくれるし、おそ松みたいに変な事言わないしやらないからさぁ、あいつなら持っててもいいと言うか…、面倒事も喜んで引き受けてくれるし」
先日のカラ松のナイスアシストを思い出し語ると、怪訝そうな表情のままの一松に説明する。
「チッ」
あ、舌打ちされた。しかもわかりやすく。
一松はカラ松相手だと余計に厳しいからなぁ、一番面倒な相手にバレたなカラ松。
でも一番面倒なのは長男か。
「俺がダメであいつだけ許されてる事が納得いかないんだけど? それとも俺みたいなゴミがこの家に出入りするのが嫌だった訳? すみませんねぇ、お目汚しで。所詮クズで死んだ方がいい人間には優しく『特別』扱いなんてしてもらう価値なんてないですもんね。 あ、人間でもないかもね・・・死のう」
あ、やっぱ気のせいじゃない、『特別』強調してるわコレ。
そして始まる一松のネガ発言。
自分もネガだからそう思っちゃうのも仕方ないか、と納得する。
でもこれだけは言おう、その発言!断じてそんな事は思っていないと。
私は誤解されたままにならないよう、真剣に一松の目を見て訴えかける。
「一松、そんな事思ってないよ!? 一松だって私にとって弟みたいな存在だし、大事な幼なじみだよ。カラ松とはちょっと利害が一致しただけ!!」
説明しても表情は変わらない。もー、根に持つなぁ。