第4章 平穏な日々に嵐はやってくる~一松~
「ねぇ、それってさぁ……俺もいたの?」
ん? 俺???
「いや、そんなスライムはいなかっ……!……!?どわぁあああぁ!!」
目に入った声の人物をようやく認識すると、ゴロゴロと勢いよく布団から転がって部屋の隅まで逃げた。
その相手は、痛そうに赤くなった自分のデコをさするっている。
目つきの悪い紫パーカー姿の男。
松野家六つ子にして、自称不吉な数字という四男。松野一松だ。
皮肉屋で毒舌、でも猫にはめっぽう弱い。たまに常識人男。
だいたい機嫌悪そう。
ちなみに、今も機嫌はよくなさそうで候。
「い、いいいいいっ、一松ぅ?!」
「・・・・・・・・どもりすぎ。おはよう、ナス子姉さん」
うわぁ、なんかニヒルな笑いして見下ろされてるよ?
っていうかまたこのパターンかい!
もういいよこのパターン!この前赤いのと青いので2回やったよ!
緑を免れて連鎖は終わったと思ったのに!
まだ続くのこの変な連鎖!しかもまた寝起きドッキリかよ。
言ってよー、そしたら準備しておくから、先に言ってよー!?
「えぇっと、そのおデコ、どうしたのかなぁ? 猫にでもやられたのかなぁ?あは、あはははは」
寝起きの時に手ごたえを感じていたのだが、赤くなったデコに目が行ってしまい、一松にも視線を悟られたようだったので誤魔化すような口調で心配してみる。
「あぁ、これね。とびっきり丸くて大きな猫が寝てるのを見てたら、突然思い切りパンチされたんだよね」
「んんんん」
汗もだらだらと口端が上がる。
「しかも普段から怪力なヤツだから寝ぼけて殴られて痛いのなんのって・・・」
「んんんんんんん」
「あ~痛い痛い・・・」
わざとらしく棒読みでデコを抑える一松。
やばい、これは怒っている・・・?
「折角やるなら起きてる時にもっと蔑んで殴られて蹴られる方が好みなんだけど?」
デコから手を放し期待の眼差しでコチラを見てくる。
やり直せとでも言いたいのか?