第25章 危険な香りの温泉旅行 動物園に行きました
「くすぐったいからやめてよトド松、っていうかもう起きる事にしたから退いてよ」
「え~折角あったかいんだからいいじゃーん、もう少しこ・の・ま・ま・・・ね?」
何度身を捩ろうとも、トド松だけでなく十四松にまで抱きしめられている為全く抜け出せない。
どうしたらこの状況から逃げられるのかと思考を巡らせていると、耳たぶに何かの感触を感じビクリと体が反応した。
「~~~っ!!!」
調子にのったトド松がナス子の耳たぶを唇に挟むと軽く齧る。
「っ、トド松・・・ほんとに無・・・」
「なっにやってくれてんだお前ら━━━━━━━━!!!」
安定の突っ込み番長の声が聞こえると、後ろにくっついた悪いピンクの虫が剥がされたようで、まるで憑りついた悪い霊でもとれたかのように体が軽くなる。
ピンクの虫はそのまま近くの寝ているカラ松に激突していった。
「おい、十四松も!!!」
「ハッ!!!!!おはようございー、マッスルマッスル!!」
ナス子を抱きしめていた十四松は、チョロ松の声が聞こえると寝ざめよく立ち上がりマッスルポーズを決める。
上半身が完全にはだけている。
起き上がり元気な十四松を見ると、ナス子は安堵する。
コイツが一番危険だけど、安全だと。
十四松を見ていると、ニパリとナス子に笑いかけた。
「姉さんもー、おはようございー、マッスルマッスル!!ハッスルハッスル!!」
「おはよう十四松、いきなり目の前にいたからビックリしたよー」
「あははー、ナス子姉さんあったかかったからぁ!」
そういう十四松は上半身がはだけている所為か寒そうである。
手招きをするとやってくる十四松の浴衣をナス子が直してやる。相変わらず袖だけダボダボだ。
「ありが特大サヨナラホームラン!!ボクも昨日姉さんの直したよ」
「んん?」
本当の弟の世話を焼くように十四松の浴衣を直していると聞き捨てならない言葉が聞こえる。
自分はいつ十四松に浴衣を直してもらったのかと考えるが、全く身に覚えがない。