第25章 危険な香りの温泉旅行 動物園に行きました
ホールド地獄に身動きもとれず固まる。
まさか寝ている間にこんなに二人と密着していたとは思わずただただ驚くが、まだ眠いと思っているナス子は絞り出すように起きているトド松に声をかける。
「な、んでアンタら私の布団に入ってきてるのさ、あったかいじゃないの・・・って違う、狭いんだけど・・・」
なんとかその場から抜け出したくてナス子は身じろぐが、二人のホールドがそれを許してはくれない。
思いもよらぬ展開に頭は追いついていない。
でも姉弟ならこんな事もあるのかもしれない、今までのぶっ殺したくなるようなキスとは違い、ハグは気持ちがいい。
起きようと思っていたナス子だが、何だか慌てるのも起きるのもコイツらを引っぺがすのも全てが面倒に思えてきた。
よくよく考えれば、ただ弟がお姉ちゃんに甘えているだけではないだろうかと思い直す。
「いいでしょ、もう春と言えど寒いんだし・・・こうやってくっついてた方があったかいし気持ちいいでしょ?」
トド松が耳に唇をつけてボソリと呟いてくると、耳がくすぐったい。
わざわざ耳元で言わなくても・・・と思ったが、もう一度寝なおそうと決めたグータラナス子はこの状態のまま、また目を瞑る。
「あれ?また寝ちゃうの、ナス子・・・」
またもボソボソと耳に言葉を降らせてくるトド松になんだか体が落ち着かない。
そして目の前の十四松の恰好も・・・浴衣がはだけて胸が丸見えで恥ずかしい。
「もうちょっと寝たいから、静かに・・・して、トド松」
ナス子がトド松の行為にこそばゆい気持ちになりながらモゾモゾとしてると、背後から抱きしめているトド松はナス子に見えない所でクスリと口端を上げた。
「ナス子姉って耳弱いんだ~・・・フゥーっ」
「ふぐぉ!ちょ、ちょっと!トド松、息!!!」
「ふぐぉって・・・あいっかわらず可愛くないよねぇ~残念だよね~」
残念だとか呆れた声を出すが、トド松のホールドは解けないままだ。
ホールドからも出られない、寝かせてももらえない、そして、起きたとしてもこの出られない状態からスマホに手が届かない。
イコール・・・・・・ゲームのログイン周回が出来ない。