第24章 危険な香りの温泉旅行 夜の海 チョロ松
先に隅を確保し寝てしまった一松を抜かし、布団の上に座る。
「あのぉ・・・お、おそ松くぅ~ん、カラ松くぅ~ん・・・」
酔っていると言えど、長男と次男からは何か物々しい空気を感じたナス子は、恐る恐る正座をして二人の表情を確認する。
カラ松は笑っていない。
おそ松はニヤついているが目が笑っていない。
「姉さん、お帰り!!チョロ松兄さんとどこ遊びに行ってたの?海?海だね!!潮の匂いすんねーっ」
やめてぇえええぇえ!!!十四松、今海の話題はやめてえええぇ!
と、心の中で叫ぶも既に時は遅い。
寧ろ長兄達にはナス子の行動など想像に容易い事だったろう。
「いやー、一松が間違えてナス子に日本酒を飲ませちゃったとか言ってたからさぁ、探しに行こうとはしてたんだよぉ?」
「・・・・・・・・・・・・・ええっと」
なんだろう、今日のおそ松いつもと違う。
なんでかわからないけど野生の勘と言うか、この変なピリリとした空気からおそ松がとにかく面白くなさそうに怒っているのではとナス子は思った。
そしてそれはカラ松も同じで、胡坐態勢に腕組みをしコチラを見下ろしている。冷視線で・・・アンタ誰だ!
この二人の表情は何かに怒っている時だと、長い付き合いのナス子は知っている。
だからこそ何かの危機を今感じているのだ。
一方十四松は一人楽しそうに布団の上で転がっている。
さすが十四松、どこに行こうと何があろうと十四松は十四松なのだとナス子は安堵した。
部屋に残っているもう一人、末弟ことトド松はコチラに見向きもしないで窓側にある椅子に座り真顔でスマホを弄っている。
まるで自分の空気を消すかのように口を開こうとしない。
巻き込まれるのが嫌なんだな・・・納得である。
まじトッティ。
「で、何が言いたいの二人共?」
ナス子の隣に座ったチョロ松がこの空気からナス子を守るよう兄達に問う。
そんなチョロ松の横顔をナス子は見上げる。
チョロ松は先ほど吐いたばかりであまり顔色がよくない。
ちなみにナス子もだが・・・、お互いがお互いを心配している感じだ。