第24章 危険な香りの温泉旅行 夜の海 チョロ松
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「うぇっ、まだ気持ち悪い・・・」
「あ、あの・・・ナス子、本当ごめん、僕が悪かった」
「べーつーにー」
あの後、結局チョロ松にもらいゲロをしたナス子はお互い足取りフラフラの状態で旅館に戻った。
そう、二人はいわゆるゲロコンビである。
旅館の中に入り、男女別トイレに入ってうがいを済ませた後、二人一緒に自分達の部屋へと戻って行く。
部屋の扉を開けると、仁王立ちしたカラ松が眉を顰めて入り口で立っていた。
「二人でどこへ行っていたと言うんだ、ブラザ~アンドシスタ~?」
子供の帰りが遅くなり、叱る為に待っていた母親のようにも見える。
しかし、見た様子では、カラ松も他の兄弟達もまだ酔っ払っているようだ。
中を見ると、先ほどの食事は片付いており、部屋の中には布団が敷かれていた。
勿論、7枚の布団だ。
誰がどこで寝るかなどギャーギャー騒ぎ立てながら布団を転げまわっている。
一松だけはもう既に半分寝かけており、その口論には参加していないようだった。
「お~、やぁ~っと帰ってきたかお前らぁ~」
入り口に立つカラ松の前にチョロ松とナス子を見つけると、カラ松が道を開け、酔っているおそ松が二人を正面から抱きしめる。
「気づいたらお前ら二人いなくなってたからさぁ~お兄ちゃん心配したよぉ、どこ行ってたんだよ二人でさぁ~怪しいな~」
後半はチョロ松にだけ聞こえるようにボソリとおそ松が耳元で喋った。
その言葉の意味が何かを探るような物言いだと勘づいたチョロ松は、おそ松の手を払いのけるとスタスタと部屋の中へと入って行く。
「別に、ちょっと酔い醒ましに行ってただけだから」
「ふ~ん、なのになんでナス子はこんな砂まみれな訳ぇ?」
おそ松に抱きしめられたままのナス子は、おそ松に目ざとく肩についた砂を払われる。
あぁ、面倒なヤツに海に行った事がバレたとナス子は思った。
「ま~ま~ナス子、とりあえず早く部屋入れって~」
「へ、へーい・・・」
おそ松に手を引かれるままに部屋へと入って行く。
ちなみに、カラ松はまだ表情が険しく、顔は酒で酔っていると言えど、空気は怒っているようだった。