第24章 危険な香りの温泉旅行 夜の海 チョロ松
「どうしたの?チョロ松」
「え、ああ、なんでもないよ・・・ってかさ、お前砂が凄いついてるんだけど!」
「あっ」
「普通いい歳した女が浴衣姿で海岸に寝転がるか?!汚いなぁ」
「だって寝転がりたかったんだもん、アレだよ!青春的な感じにっ」
「もう青春なんていう歳でもないだろうが・・・」
チョロ松がフフっと笑うと、寝ているナス子の頬に触れ顔にもついてしまった砂を払ってくれている。
外にいたからなのか、冷えてしまったチョロ松の手・・・、その手の心地よさにナス子は目を閉じた。
「・・・・・・・・・・」
砂を払ってくれていた手が止まり、お互い無言の空間が訪れる。
「チョロ松?」
ナス子の頬においた手の指先を滑らせると、ナス子の唇をそのまま軽くなぞる。
チョロ松の行動に、ナス子は自分で口を払おうとしたが、その手をチョロ松が掴んだ。
「ん?何?砂食いモンスターを早く卒業したいのだけど」
「やっぱ色気ないよね、お前って」
「どうせ女子力も魅力も数値は皆無で━━━━━━━━」
口を尖らせ反論しようとした最中、チョロ松の顔がナス子に近づく。
「言っておくけど、これは姉弟としての親しみを込めたものだから・・・勘違いしないでね」
言うとチョロ松はナス子の頬に手を当て、手首を掴んだまま自分の唇を優しく軽く押し当てた。
「・・・ん」
チョロ松からの突然のキスに目を丸くするナス子。
見上げると、チョロ松の酒で上気した赤い顔が月明かりに照らされる。
これは姉弟のキスであり、決して恋愛じゃないと以前そんな事を言われたような・・・?という事を思い出すと、ナス子は素直にそれを受け入れた。