第24章 危険な香りの温泉旅行 夜の海 チョロ松
「は~~~~~~、涼しい、飲んだわー、食ったわー」
「もう宴会はお開きっすか、チョロ松さん」
「いや、まだ他の兄弟は飲んだくれて暴れてるよ」
「お酒飲めると楽しそうでいいよねぇ」
コロリとチョロ松の方に体を回転し、座っているチョロ松を見上げた。
「僕は皆程酒に強い方じゃないけどね」
「でもあれだけ飲めれば楽しいでしょー」
「まあ飲んで兄弟達と馬鹿やるのは楽しいよ」
ナス子がふぅんと一言返事をすると、空を見上げる。
一緒にいたチョロ松も空を見上げた。
「月が綺麗だね」
「うん、今日満月らしいよ?」
「へぇー」
「夜の海って落ち着くよねぇ、昼間も好きだけどやっぱ夜の方が好きだなぁ、私は」
「そうなんだ、僕は特に考えた事もないや」
二人がなんとなしの会話をしていると、ふとナス子はチョロ松の手を握りたくなった。
きっとこれは酒の効果だと自分に言い聞かせるように、弟に甘える。
「な、なんだよ急に!」
「いや、繋ぎたいなぁと思って」
てっきり気持ち悪いとか言って振り払われるかな?と思っていたナス子だが、チョロ松は手を握られたままにナス子を見下ろすと、また空を見上げる。
「お前はさー、本当に馬鹿だよね」
「え、なんで急にディスられた?!」
「いくら皆に強引に誘われたからって、僕らの旅行に着いてきちゃうし・・・本当危機感なさすぎ、ケツ毛燃えるわ」
「燃やしてあげやしょうか?」
まだ酔いの熱は冷めないままだが、すっかり二人共いつもの会話だ。
自分がふざければ突っ込んでくれるし、悩んでいれば心配もしてくれる、相談にも乗ってくれる。
大好きなマッサージの練習台にもなってくれる。
まぁ、これは六つ子全員に言えたものでもあると言えばあるが・・・。
終わった後にちゃんと褒めるだけでなく、アドバイスもくれる有難い存在。
口うるさく説教じみている所為か、たまにどっちが年上なのかとわからなくなる時がある。
いつも一番に自分の変化に気づいてくれる相手という事でナス子もチョロ松にはなんでも本音で話してしまう。
お互い長い年月があったからこそ気づけた関係である。