第24章 危険な香りの温泉旅行 夜の海 チョロ松
くっそ、一松め!酒に酔ってるからと言ってこんな強い酒飲ますか?!
心の中で悪態をつきながらナス子は旅館の中をヨタヨタと歩いていた。
どこか涼しい場所を探し、吐いてしまう前にすぐにでも酔いを醒まそうと思ったのだ。
そして思い当たったのが、海だ。
春と言えどまだ肌寒い季節のせいで旅館の中は完璧な温度管理がされている。
今はその暖房の熱さえも熱く感じ、更にナス子の体を熱く火照らせる。
昼間におそ松に夜の海には行くなとは言われていたが、正直もうそんな事は覚えておらず、一人ロビーから外に出ると近くの海へと足を運ぶ。
誰も追いかけて来ないという事は気づかれてはいないという事、安心してゆっくりと酔いをさます事にした。
「あ~、熱い・・・そして気持ち悪い・・・コップ半分くらい飲んじゃったよ」
海岸へと到着すると砂浜に腰を下ろす。
今日はそこまで風はなく、そよそよと軽く頬を撫でる冷気が気持ちいい。
膝を抱え目を瞑り膝に頭を乗せる。
「酔ったアイツらに油断したらダメだな、学習しろよ自分・・・」
馬鹿の呟きやきなど誰も聞いておらず、ただただ空に昇る月と星だけが自分を見下ろしていた。
耳を立てると波の音のリズムがまた心地よい。
「ぅ~ぁ~、ダメだ、無理、熱い!ちょっと良くなったけどまだ気持ち悪い!!」
言うとナス子は浴衣のまま砂浜に寝転がる。
砂が浴衣につく事なども忘れ地面の冷たさを感じるべくコロコロと寝がえりを打った、その時・・・コツリと誰かの足に自分の頭があたる。
「お前、馬鹿なの?夜の海は危ないから一人で行くなっておそ松兄さんが言ってただろ?」
「チョロ松・・・って、酒臭っ」
「本当ナス子って危機感ってもの皆無だよな、普段人見知りな癖に変に他人には懐っこいし・・・危ないったらないんだけど?」
寝転がるナス子を両腰に手を当てて覗き込んでいた相手はチョロ松だった。
チョロ松も相当飲んでいたようで顔が赤い。
ナス子に一言告げると、寝転がるナス子の隣に座る。