第20章 危険な香りの温泉旅行 松会議
「・・・・・・・・・・・じゃぁ、俺が行こうか?」
スっと円の中から一松が手を上げる。
兄弟みな目が点である、まさか一松が自分からそんな事!
「だ、大丈夫か一松!無理しなくってもいいんだからな!?」
「そうだぞブラザー、そんな自殺行為をする事ないんだぞっ」
「いい?相手はナス子だぞ一松!いくら一松と言えど殺されるかもしれないよ?!」
「兄さん、やめたといた方がいいよ?!」
「ってか一松兄さんがそんな事聞いてるの想像できないんだけどぉおお?!」
「・・・・・なんだよお前ら、いつもいつも俺がムリだとか言いやがって、なんで俺ばっかり!俺だってやる時はやる男なんだよっ」
だがしかし、兄弟全員からの声を聞き、上げた手がスっと下がる。
一松は静かに体育座りに戻った。
「あ、結局やめるのね」
チョロ松が安心した様子でホッと胸をなで下ろす。
「じゃぁ、誰が聞くのー?」
元気のいい十四松の声に皆は黙ったまま。
「・・・保留だなぁ」
「フ、保留か」
「まぁ、この件に関しては仕方ないよね」
「・・・・・・」
「えー、聞かないのー?」
「男性不信のナス子姉にさすがにこれは聞きずらいしね」
「なんだよぉ、結局振り出しかよぉ~、つまんねー!」
そして短く会議が終わり、自分達も温泉に入りに行くのだった。
心の隅でナス子の事を悶々と想像する六つ子だが、それは誰の口からも出される事はなかった。今の所、は。