第19章 危険な香りの温泉旅行
信じられない。
嘘でしょ?誰かいますぐ嘘だよ、これは悪い夢ですよって私に言って?!
なんでこんな事に?どうして??
私は部屋の入口で茫然と立ち尽くす。
荷物を仲居さんに持ってもらい、私達は一つの部屋に案内された。
それがおかしいのだ、何故なら案内されたのは広い一つの部屋。
そう、私の荷物もそこで下ろされた。
これってどういう事?女の人は別の部屋とかではないのか?
・・・・・・・・・ハッ
そういえば入り口の看板には松野様御一行としかかかれていなかった。
電話の予約はトド松がしてくれた。
・・・・・・・・・家族旅行、そうだ、この福引のヤツ、家族旅行じゃん!!
そんな事もすっかり忘れ、私は旅行に浮かれていた。
家族って言ったら普通はファミリールームに案内されるよね?!
別にして下さいって事前に言わない限りは・・・。
「おかしい・・・何で私がアンタらと同じ部屋で寝泊まりしなきゃならないの?!折角の休みの日に、温泉で・・・3泊4日、ずっと部屋でゴロゴロして温泉入って、ゲームして、ゴロゴロして、漫画読んで・・・温泉入ってまたゲームしようと思ってたのにぃぃぃぃぃ」
「お前それやってる事普段と変わんねぇだろうが!」
部屋の中で荷物を整理するチョロ松がすかさず突っ込んでくる。
いいじゃないのさ、温泉旅館で自分の好きな事をただただ満喫して過ごすくらいさー。
「あ、見て!窓の外!ナス子、海が見えるよ、一緒に写真撮ろうよ~♪」
「ん?何?トド松・・・って、ほんとだー、歩いて行ける距離だねっ」
「ボクも撮ってー!!」
3人で海をバックに写真を撮ると、太陽に反射した海の水がキラキラと反射して綺麗だった。
海かぁ、夜に行くと波音だけを感じて落ち着くよねぇ。
「一人で海行くなよー?特に夜とかな」
私がまだ何も言わずに海を見ていると、まるで私の考えがバレているように突っ込まれる。
部屋の真ん中を陣取って、早速荷物は放置。
馬鹿長男が鼻くそをほじりながら私に呆れた声をかける。