第19章 危険な香りの温泉旅行
間もなくして、私達は目的の旅館に辿り着いた。
チョロ松に労いの言葉をかけるとやっぱり嬉しそうだ。
運転手でもうるさかったけど、もう慣れてるから別にいい、煩いけどね。
「おー・・・なんか、雰囲気ある旅館だねぇ!」
「結構長い事経営してる旅館ってネットに書いてあったしね、お風呂の写真もご飯の写真も綺麗だったよ?しかも今日泊まる部屋は露天風呂付きなんだってさ!」
「へぇ~!さすがモールの福引!!太っ腹だねっ」
露天風呂付き客室という言葉に心を躍らせつつ、トド松にスマホを返した後、相変わらずトド松はずっとスマホを見たまま応える。
コイツはあれだ、スマホ依存症ってヤツだな!
あ、でもそれ私も人の事言えないわ。
「ふーん・・・確かに古びた立たずまいが雰囲気を感じさせるね・・・」
「ねー!なんか出たりして~、ちょっとワクワクするねっ、一松!」
外観を見上げる一松の隣に並び私も一緒に見上げる。
古びた感じだけどそこがまた個性的と言うか、秘境?まるで秘密の旅館みたいだ。
思ったよりこじんまりしている。けど私は広い所よりこういう狭めな所が好きだ!落ち着くし。
意気揚々とした私が一松に視線を向けるとバチリと視線が合う。
・・・・・・・・・・あ、旅行のテンションで忘れてた。
私はまだ一松に怒っているのだった!!
正直あからさまに目を逸らしてしまったのが申し訳ないとも思ったが・・・。
「・・・・・・は、早く行こう!」
「わーい、旅館旅館ー!」
適当にぼっ立ちしていた十四松の袖を掴み、足早に旅館の中へと入って行く。
他の皆もゾロゾロと後に続いた。