第18章 私は二度死にかける おそ松 一松
ナス子が起きないよう独り言を呟きながら、彼女の頭を撫でる。
頭の形、髪の感触を味わうように優しくなぞり、ゆっくりと手をすべらせて行くと、おデコ、鼻先、そして唇に指先を置いた。
ピクリと僅かな反応を見せ、閉じていた唇が薄く開く。
赤い舌がちらりと覗き、ズクリとおそ松の心臓が一度だけ鈍く脈打った。
「・・・っ━━━━━━━━あー!!もう、マジ調子狂う!!!」
「フごっ?!」
そんな自分の反応を振り払うように大声を上げ、おそ松はナス子の鼻を思い切りつまむと同時にもう片方の手で口を塞いだ。
寝ているナス子は急な息の苦しさにジタバタと徐々に大きく暴れ出すが、さすがに目を覚ますと、バシリと掴まっていた手を思い切り払いのけた。
「殺す気かっ━━━━━!!ちょっと一松!!起こし方ヒドクない?!」
「おそ松だけどね!!」
「・・・・・・悪い、ナス子、尾行されてバレた・・・というより、バレてた」
「は・・・・・・・・・・はぁあああああああああああ?!」
悪びれた一松が子猫を抱きながら襖の壁にもたれかかり、申し訳なさそうな顔をしている。
一方ナス子を殺しかけたおそ松は笑っている。
「よ!ナス子、久しぶり~」
「・・・・・・・・・お、お、お、」
「ん~、何なにぃ?」
「おやすみなさい!!!!!!!!!!!」
言うとナス子はまた掛布団を深く被る。
チョロ松やカラ松に相談した後、スッキリしたナス子ではあったが、まだおそ松に会う心の準備は出来ていなかった。
慌てて布団の中という逃げ場を作り、篭る。
「んだよ、連れねぇなぁ、彼氏様が遊びに来てやったんだぜー?もっと他に言う事ないのぉ?ナス子ちゃ~ん?」
「は?彼氏?・・・アンタ達いつから付き合いだしたわけ・・・?」
「付き合ってない!!」