第18章 私は二度死にかける おそ松 一松
まさかの長男の尾行に、自分もどうしようかと考えるも、走って逃げると言うおかしな行動には出れない。
手の中にあるスペアキーを握り絞めると、またどうしたものかと頭を痛めていた。
「あれ?こっちの方向ってナス子ん家じゃね?一松ナス子の家に行くの?こんな昼間に??アイツ寝てるんじゃねーのぉ?」
「・・・寝てるだろうね、大方」
サンダルの足音とスニーカーの音が混ざる。
こいつをどう振り払えばいいものかと一松は考えるが、構ってちゃん発動中の長男は、これでもかというほどしつこい。
本当は二人で行くのはもの凄く嫌だと感じている一松だったが、ここは諦めてナス子の家に向かう事にしたのだった。
それより何よりスペアキーだ。
このままではバレてしまう・・・
それだけは避けたい一松だが、良い案が浮かばない。
ああ・・・こんな時俺に金があれば・・とそんなことを一松が思っていると、背後からまた声がかかる。
「そうそう、なぁ、いちまっちゃーん」
「あ?」
「お兄ちゃんずーっと聞きたかった事があるんだけどぉ」
振り返った一松に目を光らせてニタリと笑顔を見せるおそ松が、突然一松のポケットに手を突っ込む。
「・・・なっ!!」
中からからすかさずスペアキーを奪うと、おそ松は目を細め勝ちの表情で奪ったものをプラプラと相手に見せ付ける。
「あー、やっぱりぃ?俺ってこういうの目敏いんだよねぇ、自分で言うのもなんだけどね?」
「・・・・・・・・・・・・」
「ダメじゃん、一松ぅ、俺たちに隠し事なんてさぁ~?お兄ちゃん寂しいよぉ?」
「・・・あ、えっと・・・・・・」
秘密がバレていた事に焦ったのか、それとも自分が大事にしていた唯一のナス子との『特別』が奪われた事に焦ったのか、今の一松にはわからなかった。
ただ一つわかるのは、一番渡ってはいけない人物の手に、鍵が渡ってしまった、という事だ。
一松はナス子に心の中で謝罪をしながらも、結局このテンションになった長男には逆らう事は得策ではないと諦め、仕方なくナス子のマンションに二人で向かうのであった。