第18章 私は二度死にかける おそ松 一松
冬が去り、春もやって来た陽気のいい昼間。
といえどもまだまだ肌寒さは続いている。
道路には紫色のパーカーを着、マスクを着けた男性が猫背で歩いていた。
「・・・なんでついてくるの」
「え~、別にいいじゃ~ん!俺暇だしっ」
「・・・・・・」
家を出た一松は、何故かおそ松に絡まれている。
と、言うより勝手に一松の行く場所に付いて行くようだ。
一松が少し歩き、振り返ると、同じくピタリと止まるおそ松。
頭の後ろで両手を組んで、ニマニマとしている。
「・・・・・・どこまでついてくる気?他に用事ない訳?」
「なんだよいちまっちゃーん、冷たいねぇ!俺暇なんだってばー、お兄ちゃんと一緒に遊んでよぉ」
「迷惑」
おそ松に一言残すとまた進みだす。
一松のパーカーのポケットの中には目的の場所、ナス子の部屋の鍵が入っている。
「なぁなぁ、一松ぅ?どこ行くの?いつもの裏路地こっちじゃなくね?」
「別に、どこでもいいでしょ・・・っていうかそろそろおそ松兄さんもどっか行ってくんない?」
以前、ナス子との約束でナス子の部屋のスペアキーを預かった一松だが、兄弟に知られてはイケナイと言う条件付きだった。
本当はカラ松と共同だったが、結局の所鍵は既に一松の物となっている。
ちなみにこの鍵を自分が持っている事は、特におそ松には伝えないで欲しいとナス子に厳重に説明されていた。