第17章 どうしようもないけど可愛い弟達 十四松 トド松
「ふー」
有名珈琲店に入ると、香ばしい香りが鼻をくすぐってくる。
新しい店と言うより昔から馴染まれたマスターがいるような店だ。
落ち着くジャズのBGMが流れている。
既にこの雰囲気にのまれ、この場所ならずっと居てもいい!と言う思いにナス子の心は支配された。
「へー、トッティこんなとこも知ってたんだ、スッゲーね!」
「ふふふ~、褒めても何も出ないよ十四松兄さん♪」
「いやぁ、でもトド松がいなかったら本当こういう場所わかんないから有難すぎるんだけど!私ここ好きっ」
目をキラッキラ輝かせるナス子を横に、トド松は安堵する。
ま、先にナス子姉さんの好みを調べておいたんだけどね・・・と、心でガッツポーズを送るのだった。
3人で席に座る。
当たり前のように十四松がナス子の隣に座ろうとしたが、今度はトド松が十四松をケツで飛ばし隣に座る。
十四松は少し頭を掻いて考えたが諦めて向かいの席に座った。
暫くのティータイム、ここで話をゆっくりする事に決めた3人は出てきた珈琲を口に運び幸せそうな落ち着いた表情になる。
ナス子は恍惚とした表情で深く息を吐いた。
「あー、これいいねぇ。これ豆売ってるかなぁ?売ってたら帰りに買ってこうかなぁ~」
「ね、ここの珈琲美味しいでしょ♪前に女の子と一緒に遊びに来た時にリストに入れてたんだどさっ」
「女の子!?」
カフェオレを飲む十四松がピクリと反応している。
また死中引き回しの刑になったり、6つ子から外されないといいのだが・・・。
そんなトド松へのナス子の心配を余所に、トド松は話を続ける。
「そ、その子も姉さんみたいに珈琲が好きでさ、この店によく来るんだってさー、ここなら一人でもこれるし、楽って言ってたよ」
「あー、ちょっとわかる気がする~。インテリアとかもアンティークいっぱいだし、適度な広さで落ち着くし、一人で来るのには最適かも」
「姉さんもたまにはこうやって外出ればいいんだよぉ」
「でもウチには珈琲係がちゃんといるからなぁ」
「珈琲係??そんな名前の珈琲メーカーあったっけ?」
トド松が首を傾げたが、ナス子の頭の中の珈琲メーカーと言うのは人間だ。
しかもこの二人がよく知る次男坊、カラ松である。