第16章 ヤケクソ療法? カラ松 チョロ松 ※多少シリアスが含まれます
二人がここまで怒るのには、ナス子が男性不信になるきっかけとなったとある出来事が関係している。
それはまだ六つ子が高校生の時、下校中の六人が、嫌がる女の手を引き、無理やり車に乗せようとしている男を道路の反対車線から見かけ、よくよく見ると抵抗をしている女は自分達のよく知っている人物、そう、ナス子だった。
それとわかるや、六人は車の往来する道路に飛び出し、ナス子を救出し、相手の男を殴るわ蹴るわの大乱闘。
警察も駆けつけ、ちょっとした騒ぎになってしまった。
ナス子は被害者の女性、六つ子はあくまで救出が目的で、学生の身ということもあり注意喚起されるだけで済んだが、相手の男はナス子と六つ子の証言から婦女暴行・誘拐未遂の現行犯で逮捕された。
男は前にも同様の事件で起訴されており、執行猶予中の身だった。
この事から、ナス子は男性不信に陥ってしまった。
そしてその後、六つ子達の間で、ナス子のことは自分達が守ってやろうということになり、現在にまで至る。
むしろよく男性不信になるだけで済んだと思うほどの出来事だが、そこには、ナス子にとっての六つ子達の存在が大きく影響していた。
幼馴染で年下とはいえ、六つ子も男である。
年齢を重ねるに連れその事実は大きくなっていくのだが、お互いに家族のように思って付き合ってきていたので、ナス子も六つ子とは普通に接することが出来た。
決して自分のことを『女』として見てこない、という安心感が、その場所にはあった。
だがここにきて、その牙城は崩れ去ろうとしていた。