第106章 【一松ルート】花詰草
「ミケ子関係の話だと本心なのか冗談なのかイマイチわからなくなるんだけど!」
ジトっとした細い目の彼女の唇に、俺は顔を近づけ触れる程度のキスをする。
目を閉じる前に素早くキスしたからか、ナス子は呆けた顔に変わるのがまた面白いと思わない?
「んな………そ、そんなんで誤魔化そうなんて……」
「言葉よりはこっちの方がわかりやすいんじゃないかと思ってね? 嫌だった?」
「………ぐ……っ、嫌じゃない!」
「ふっ……わかりすいのはお前も一緒だね」
何度キスしてるんだよって思うけどこういう不意打ちに弱いコイツは挙動不審で、思わずその動作に口元を緩めてしまった……不覚。
本当はもっとこの場に居たいけど、下手すると酔った長男がこのマンションに押し掛けてきそうだし行くしかないか。
「……じゃ、俺行くんで」
立ち上がってナス子に背を向けた時、後ろからグッと服を引っ張られて立ち止まる。
「帰って来る?」
「……さぁ、どうだろ? 飲みに行くって言うし俺もそのまま酔っ払って家帰るかも。他の奴らがついて来るのも嫌だし」
床に座っているナス子は今日の俺の最初のテンションがうつったのか置き去りにされてしまう犬みたいな瞳をして見上げてきた。
━━━━━━━━━━あああぁ、行きたくねええええええぇ!!
そもそも何で俺が今日、ここに居るのも来るのも知ってるのにいきなり呼び出されないといけない訳?!
アイツら揃いも揃って俺を呼び出そうとするんじゃねぇよっ。
そういう所が気が使えないって言ってんだよクソ×××共が!
「一松~……」
「なに?」
「………………さ……寂し、い」
ナス子はまだ掴んだ俺の服を離さないまま、軽く引っ張る。
そんでもって付け足された言葉に目が丸くなってしまった。