第106章 【一松ルート】花詰草
幸せだと噛みしめる度に俺はおかしくなっていく。
いい事ばかりの毎日、俺だけを見てくれるナス子。
ずっと
ずっと
そうなったらいいなと思っていた事が現実に起きているのにどうしても怖いと言う感情が抜けずに自暴自棄になる。
結局、付き合う前の片想いでも……付き合ってからも俺はネガティブで下を向いてしまう。
けど、未来を想像する事もあるのは俺の中の欲望と矛盾。。。
死にたいなんて思いながら、いつかもっと時間が経って俺達がこれ以上に寄り添って幸せそうに笑っている未来を想定してニヤけてしまう時だってある。
変? あぁ、まぁそうだよね。
でもわかるよね?俺ってこういう感情の起伏も激しいキャラな訳だし。
片想いの時期の辛さを思うとかなりの忍耐力が俺の心を支配した。
他の兄弟に取られてしまうんじゃないかとか、俺みたいな奥手ですぐに逃げだす男はナス子を守っていけるのかとか。
最初はナス子が幸せになれるのならそれでもいいと思ったけど、そんなの俺の勝手な判断で、相手の気持ちなんておかまいなしだった訳。
結局はナス子の気持ちを試すかのようにキスしてみたり、心に揺さぶりを掛けたりと混乱させたのも自覚してる。
誠実なものではなかったかもしれない。
「……ダメだ、今日はTVの気分じゃないかも」
「うーむ。表情的にそんな感じだね? じゃあ一緒にまったりゴロゴロしますかぁ」
「悪くないけど大半それってナス子の希望でしょ」
「あっははぁ、そうとも言う!!」
いいけどね、そんな温和な空気も悪くない。
殺伐としていた片想いの辛さを考えているより今のこの二人と一匹の空間が俺の唯一の癒しの空間だ。