第106章 【一松ルート】花詰草
これが本当に二人が似て来た証拠だってんなら嬉しいけどね。
「あっちゃぁ~子猫がジャンプ失敗してる!! でも可愛いーーーっ」
「うん、超絶可愛い。って痛い痛い!! ミケ子、何で俺の足の指噛んでんの!?」
急に足に衝撃が走り視線を下げるとミケ子が俺の足にしがみつき噛みついている。
痛いって言っても甘噛み程度なんだけどね。
「ふふ、妬きもちだ。ミケ子は一松の事が大好きなんだもん。頭もいいし、会話がわかっちゃってるのかなぁ?」
「…………俺、猫に生まれ変われたら来世はミケ子の旦那になろうかな」
なんてね、冗談でニヤついてナス子の顔を見ると、やっぱり頬を膨らせて拗ね顔だ。
猫に妬いてどうすんだろうねぇ、可愛いけどさ。
でも俺のそんな言葉も聞こえていたようで、ミケ子は嬉しそうに俺の足に擦り寄った。
「うー、複雑!! じゃあ私は二人の飼い主になるわ」
「それでいいのかよ」
「いや、よくないようでいいような? んー……」
そんな事言ってるけどさ、もしも来世があるのなら俺はまた同じようにコイツと恋をしたい。
けどこの人生よりももっとスムーズにくっついて、スムーズに告げたい言葉を告げて……ってもうそれ俺じゃないわ誰だよ。
それにしても以前の俺は少しだけポジティブに考えた事もあったような気がするんだけど、ニンゲンってのは落ちたり上がったりと忙しいもんだ。
俺がナス子を殺したいと思うのは嘘じゃない。
勿論俺だって追いかける。
先に俺が死ぬのと、ナス子が死ぬのではどちらが辛いんだろう。
可愛い猫の映像を見ているのに、俺の思考はまだそんな事を思う。
きっと今日も寝る時は同じように首に手をかけてしまうかもしれない。
でも、こんな俺にそんな資格なんてあるの?
って思う。
ボケっとTVを見ていると、逆に俺の首に冷たい指の感触が触れる。
「!?」
「………また、なんか考えてたでしょ?」
「…………いや、別に」
「死にたいとか?」
「さぁ、どうなんだろ」