第15章 構ってほしい長男 おそ松
「お前がさっき言ったんだろうが!!俺はそっくりそのまま返しただけですぅ~!で?どうだったんだよ!」
「はぁ?!なにが?!」
「俺とのキスはどうだったかって聞いてんの!」
おそ松の台詞にナス子は何か言おうと拳を握り締めたが、何かを堪えたようにぐっと一度息を飲むと、これでもかというくらい大きな大きな溜め息をつき、ソファに脱力する。
ぷんすことまだ多少鼻息が荒いおそ松が、目に何か期待を抱いてナス子を見るが、その瞳に映るナス子の表情は冷め切っていた。
「別にどうもこうもないけど」
「はぁ?!なにそれっ!」
おそ松は憤慨するが、ナス子は冷めた態度を崩さない。
「何も感じなかったけど。他に何か言ってほしいわけ?気持ちよかったとか?こんなのハジメテ~とか?」
「いや別にそういうんじゃないケド・・・こう、なんかあるだろ」
「ない」
ナス子がそう言い切ると、おそ松もすっと目を細め、ソファの背もたれに自身の体重を預けきって脱力する。
「なんだよぉ~、兄弟以外との初キスがこれかぁ~~」
先程のナス子に負けないぐらいの溜め息をついてそう言うと、ジロリと視線を隣に戻す。
「ねぇ、私アンタのこと殴っていいよね?むしろ殺していいよね?」
「いいじゃん別に。またカレカノ括弧仮やることもあるかもしれないんだろぉ?キスぐらいしておいた方が嘘にも真実味が出るんじゃないの?元々お互い知らない仲じゃないんだし、もういい年だし、キスくらいさぁ」
事の発端となった会話とは、言ってることがまったく逆転してしまっていることにおそ松は気づいていない。
ナス子もそれには気づいていないが、怒りや他の感情で頭はいつも以上に回っておらず、何か言い返したいがうまく言葉が出てこない様子だ。
すっかり通常運転のおそ松が、耳の穴をほじくってそれを適当なところへ飛ばすと、ナス子はすくっと立ち上がり、襖の方へと歩みを進める。
「あれ?帰んの?」
「帰る・・・・・・・・・・・・ムカついたから!!」
「あっそう。そうですか~じゃあ下までお見送りしますよ~」