第15章 構ってほしい長男 おそ松
そう言ってソファからのそっと立ち上がる。
言葉には答えず、ナス子が階段を降りていくとおそ松もその後ろからついていく。
玄関まで行くと、丁度チョロ松が帰宅してきたところだった。
「あれ?ナス子姉来てたんだ・・・・・・って、どうしたの?」
「おー、チョロ松おかえりぃ~ナス子は今から帰るとこだよ」
「あ、そうなんだ。それはいいんだけど・・・」
チョロ松が何かを言いかける前に、ナス子は自分の靴を穿くと、「お邪魔しました!」と一言言って足早に松野家を後にした。
あっという間に見えなくなった背中を見送り、チョロ松が部屋の中に入ると、おそ松は居間のちゃぶ台の前につっぷしていた。
「ナス子、調子でも悪いのかな?」
「はぁ?なんで?すこぶる元気でしょ」
「いや、なんか顔が真っ赤だった気がして」
「チョロ松ぅ、お兄ちゃん喉渇いちゃったんだけどぉ~お水汲んできてぇ」
「はぁ?!なんで俺が、自分で行け・・・・って、なに?お前も熱でもあんの?」
「さっきから何言ってんの?チョロ松ぅ~ねぇ水汲んできてよぉ~」
「ったく~・・・熱測ってみたら?顔赤いぞ、お前」
そう言い残すと、チョロ松は台所へ消えていく。
言われたおそ松はちゃぶ台に肘をついたまま両手を頬に当てると、眉を寄せて呟く。
「・・・・・・・・マジか・・・・時間差でくるかぁ~・・・」
確かに熱くなっている自分の頬を押さえ、チョロ松が持ってきてくれた水を一気に煽り口を拭うと、先程のことをまた鮮明に思い出してしまいまた赤面するおそ松。
「・・・・・・・いやっ!チンパンジーだから!!」
「何急に?!」
おそ松の突然のわけのわからない叫びに律儀に突っ込むチョロ松。
その日、結局赤くなったり真顔になったりを繰り返すおそ松は、他の兄弟からいつも以上に特異な目で見られるハメになったのだった。