第104章 【逆ハー:卒業ルート】王道パターン、発動パートⅡ
「ぼくの事心配してくれるんだね、ありがとうナス子姉。やっぱり持つべきものは彼女でお姉ちゃんだよね」
今の自分にそんな事を言われても素直に喜べないのが残念だが内心ではめちゃくちゃ嬉しい。
末っ子ってこういう所がズルイって言うか、役得と言うか。
他人のように接しようと試みていてもつい甘やかしたくなってしまう。
とは言いつつも、いつも一番酷い発言が多いのはコイツでもあるのだが。
「ナス子姉、兄さん達の話なんて忘れちゃっていいからね? 今から話すから、ぼくとの話だけ覚えててくれたら嬉しいな♪ 思い出してとは言わないからさ、ぼくらの記念日……また新しく作って行こう!」
「えっ、う、うん」
ギュっとトド松の大きな手がナス子の手を包み込む。
他の五人に比べれば、少しマトモな言葉にキュンとしてしまう。
もし、もしナス子が本当に記憶が戻らなかったとしても、自分と別れるとか、そんな事はしないのだなぁと発言から伝わってくる事、それがただただ嬉しかった。
他の松達も、そんなフォローの言葉はなかったが、諦めずに捏造の回想や発言なんかを語ってくるあたり、関係は変えたくないと、そういう事なのだろう。
「あー、どさくさに紛れて手ぇ握ってるー!」
「きったねぇぞトド松! 自分だけ触るとかっ、俺ら我慢してるのにっ」
十四松、おそ松と文句をブーブー垂れている所に当たり前のように残りの面々も面白くなさそうな顔をしている。
しかしトド松は握った手をそのまま繋ぐと、ニコっと笑って可愛い口元で語りを始めた。