第104章 【逆ハー:卒業ルート】王道パターン、発動パートⅡ
「ハイハイハイハハイハーイ! いいっスか! いいっスか! ボクはね! ボクと姉さん馴れ初めも聞いてもらえるー?!」
「はい、十四松さんどうぞ」
「あざーっす!! えっとねぇ……あれは……忘れもしない、太陽がギラギラと照りつける夏……聞こえる歓声……そう、甲子園に出場したボクが、惜敗した日……」
「なんで急にいい声を出し始めた」
いつもの間の抜けた声ではなく、低く落ち着いた声で話し始めた十四松に冷めた目でトド松がツッコミを入れる
<十四松 回想>
「………」
甲子園に初出場を果たしたボクは、準決勝で敗退した。
ボクの夏は……終わってしまった。
「十四松……」
「……ああ、ナス子姉さん……応援きてくれてたんだね! ありがとお!」
「っ……十四松……」
「あははー、負けちゃったぁ。姉さんにカッコいいところ見せたかったのにぃ」
今のボク、上手に笑えてるかな? なんだか、口元が、目が、引きつってしまってる気がする。せっかく姉さんがボクのところに来てくれたのに。だから、ちゃんと笑っていたいのに。
「十四松……私の前でだけは……無理しなくていいんだよ?」
「ええ? なにが? あはは、やめてよ姉さん、ボク別に無理とかしてないし」
「っ……バカ! そんな顔して……なにが無理してないって言うの? ホントに……バカなんだから」
そう言って、姉さんはボクをきつく抱きしめた。
負けたのはボクなのに、ボクより悔しそうな顔をした姉さんが、肩を震わせながら泣いているのがわかる。
ボクも姉さんの背中に手を回して、強く抱きしめ返すと、我慢しながら泣いていた姉さんが声を出して泣き始めてしまった。